Universal Audioから待望のコンパクトエフェクターがリリースされました。
だいぶ前からアナウンスされていてまだかまだかと待ち望んでいたエフェクターなので期待が膨らみます!
早速使わせていただく機会を得たのでレビューしてみたいと思います!
今回リリースされたエフェクターは3種類。
- Golden Reverberator
- Starlight Echo Station
- Astra Modulation Machine
になります。
ギター、シンセ、PA、Mix等、色々な場面で試してみました!
※Golden Reverberatorは実際に購入した製品で、残り2種は株式会社フックアップ様からお借りした製品になります。
1. Golden Reverberator
まずはリバーブからです。こちらがギターアンプで録音したサンプルになります。
Hidden Placeスタジオにて、ギタリストの河部翔さんに試奏していただきました。ギターアンプにRoyer Labs R-121でマイキングした音になります。
Golden Reverberatorにはデフォルトで3台のリバーブが内蔵されており、A/B/Cと3種類のバリエーションが選べるようになっています。さらに製品登録するとダウンロード可能な追加のリバーブもあり、合計で4種類のリバーブが収録されます。
- Spring 65:60年代のチューブ駆動のスプリングリバーブ
- Plate 140:50年代後半のスタジオプレートリバーブ
- Hall 224:70年代後半のデジタルスタジオリバーブ
- Chamber & Plate 224:224のPlateとChamberモード
となっており、同社Universal AudioのUADプラグインを使っている方には馴染みの深いリバーブになっております。UADプラグインにはFenderのSpringReverbは無かったので今回初登場になりますね。是非プラグインでも出していただきたい!
逆に収録内容が若干ギター目線なリバーブチョイスなのでAKG BX20やLexicon480L、EMT250なんかも使えたらいいのになどと思ったりしましたが、プラグイン1つが1万円以上する物なのでこの価格はかなりお得ですね。
各リバーブ毎に3種類のモードがあり、キャラクターを変える事ができます。6個のつまみの機能はリバーブの種類によって若干異なります。複雑になり過ぎずかつ色々出来る丁度いい操作の構成になっています。
使い方など詳しくは日本語マニュアルが非常にわかりやすいのでこちらをご覧ください。マニュアルを見るだけでワクワクすると思います!
私の使い道はエンジニアなので録音の際のかけ録りの選択肢の1つとしてはもちろんなのですが、PAの時ミキサーで使うリバーブとして試してみました。UADプラグインはMixでも良く使いますし、PAでApolloを持ち込んでプラグインを使うこともよくありますので、PCレスでエフェクターが使えて手元ですぐに操作ができるコンパクトエフェクターはかなり戦力になると思います。
今回はサンプルでcolspanというバンドに協力頂き、録音音源にMixさせて頂きました。
アコースティックギターとドラムで使ってみました。オーディオインターフェイスに接続してDAWのハードウェアインサートで使用しています。
アコースティックギター Chamber & Plate 224(Constant Density Plate A)→Plate 140 C
ドラム Plate 140 B→Hall 224
今回使ってみてUAD由来の質の良さをしっかり受け継いだエフェクターだと感じました。リハーサルでもPAミキサーで使ってみたのですが、Mixで普段使っているUADプラグインと同じイメージで使えました。僕はよくリバーブのリターンにEQをするのですが、その使い方が合っていると思います。リバーブのキャラをより引き立たせることができました。
シンセも試してみたのですが、MODの作りがすごく良くできていてつまみ一つで艶が出ます!ステレオイン・アウトができるのでエンジニアやキーボーディストにも使ってもらいたいエフェクターです!
試奏していただいたTAMIWのギターリスト河部翔さんの感想
ミキサーで使うエフェクターという印象で、美しく弾きやすかったです。
オケが多い曲中で存在感が増すリバーブだと感じました。逆にオールドスクールなスタイルの場合クリアすぎるかもしれません。音を濁らせたい場合不向きかもしれません。深くかけてもどこまでも広大でクリアな印象なのでそれが強みでもあり使い方を選ぶと思います。
録音させていただいたHidden Placeスタジオのエンジニア田口智章さんの感想
ギターレコーディングにおいて「空間系は後でこっちで掛けましょうか」っていうシチュエーションが変わる可能性があるクオリティだと思います。普段のスタジオはペダルボードで、音源制作ではデスク上で使いたいなという印象。
Lexicon 224モデルはシンセとの相性がバッチリ、いつまでも弾いてたい。ドラムにも良し。Springモデルはギターアンプで鳴らす時にマッチした太さ。Hall EMT140モデルはドラムに深くかけた時にミックスの方向性が変わるぐらい大きなインパクトのある音だと思います。
2. Starlight Echo Station
次にディレイです。Starlight Echo Stationも同様にデフォルトで3種類のディレイが内蔵されており、製品登録するとさらに1モデル追加されます。さらに、各モデルにA/B/CとバージョンがありMod等のキャラクター違いが3パターン選べます。
モデルとなるディレイはこちらになります。
- Tape EP-Ⅲ:70年代のテープエコー
- Analog DMM:70年代〜80年代のバケツリレーディレイ
- Precision:モダンなディレイ
- Cooper Time Cube:ホースを使った機械式ディレイ
こちらもUADで馴染みのあるディレイが収録されていますが、注目はAnalog DMMです!待望のバケツリレーディレイ!こちらもまだUADではリリースされていないタイプのディレイで是非プラグインでも使いたいですね。
デフォルトの3モデルのディレイの比較を聞けるようにサンプルを用意してみました。Mixで使っているのでステレオでの使用になります。こちらも楽曲はcolspanというバンドにご協力頂きました。
エレキギター Tape EP-Ⅲ
Tape EP-ⅢのA/B/Cはテープの種類(Mint / Used+Warm / Dark+Worn)となります。Modはワウフラッター、Colorはテープへの録音レベルになります。
エレキギター Analog DMM
Analog DMMのA/B/Cは(VibratoMod / ModOff / ChorusMod)となりModで深さを調節できます。
エレキギター Precision
PrecisionのA/B/Cは(FlangerMod / ModOff / ChorusMod)となりModでコントロールできます。
詳しくはこちらの日本語マニュアルをご覧ください。
こちらも素晴らしいクオリティで余韻のカラーがTapeとDMMでしっかりと再現されています。滲み方とでもいいますか、素晴らしく音楽的な彩りのある変化をします。
アナログ機材そのものを鳴らしているような有機的な感覚に演奏が生き生きしてきます。MODのかかり方も素晴らしく、今回はセンターより若干下げ目ですが深くかけても素晴らしく、ギターだけでなくシンセでも使いたいサウンドでした。
アンプで使ってもバッチリでこちらはバイパス時でもプリアンプが動作するモードがあり、のちにリリースされる機能で導入できるそうなのでそちらも期待大です!Cooper Time Cubeが試せなかったのが悔やまれます。購入した時の楽しみにとっておこうと思います。
楽曲を提供していただいたcolspanの楠川昌平さんの感想
デジタル感が全くなく自分の持っているアンプやギターのサウンドを最大限に引き出してくれると思います。ソロで踏むとフレーズがしっかり前に出てきてくれるし、粒立ちも良く音像もはっきりしているのでかっけぱなしでもいけるし、飛び道具にも使える。
操作性もシンプルで聞いたことがあるディレイサウンドを直感的にも作りやすいところもいいですね。ディレイってギタリストにとって切っても切れない存在だと思うんです、だからこそ高品質で触り心地の良さはめちゃくちゃ安心できますね。
3. Astra Modulation Machine
最後はモジュレーションです。モジュレーションはデフォルトで3モデル、製品登録をするとさらに2種類追加されます。
- ChorusBrigade:バケツリレー式日本製ストンプボックス、コーラスとビブラート
- Flanger Dblr:バケツリレー式ラックマウントスタジオフランジャー
- Trem65:オプティカルチューブ式トレモロ
- Phaser X90:スクリプトロゴとブロックロゴのフェイザーをベースにしたもの
- DharmaTrem61:トレモロとフェイザーを組み合わせたエフェクター
今回はデフォルトの3種類のサンプルになります。こちらもcolspanに楽曲を提供していただきました。シンセパッドとエレピのパターンになります。
シンセパッド / エレピ Dry
シンセパッド / エレピ ChorusBrigade
PadはStereoDualモードで、EPfはClassicモードでのサウンドになります。
こちらもPadはStereoDualモードで、EPfはClassicモードでのサウンドになります。
シンセパッド / エレピ Flanger Dbler
エレピ Trem65
Tremolo Dual Mono
Sine→Squareの順で再生されます
Tremolo Stereo
Sine→Squareの順で再生されます
こちらもUADプラグインからコーラスやフランジャーが収録されています。肉厚なコーラスや密度の高いフランジャーに加え、感動したのはトレモロでした。深くかけても薄くかけても使えるトレモロでLFOの感じが絶妙でした。オプティカルチューブ式の感じが素晴らしく表現されています。
収録はできなかったのですが、ギターでも試した所アンプでモノラルで使っても素晴らしいサウンドでした!PhaserやDharmaTremは製品登録後のお楽しみですが期待大です!特にハマったのはシンセやエレピで、キーボードのセットに組み込めばサウンドのクオリティが一気に上るエフェクターだと思います。
詳しくはこちらの日本語マニュアルをご覧ください。
楽曲を提供していただいたcolspanの楠川昌平さんの感想
Astra Modulation Machineに関しては、いい意味で律儀な印象でした。ツマミをMAXにしても崩壊することはなく、音楽的になってくれる。
濃密なまま出力してくれるし、サウンドからフレーズや曲を連想しやすくなりそうです。また、ニュアンスも汲み取ってくれるので感情的になれますね。シンプルなフレーズとかをずっと弾いていたいみたいな。ノスタルジックで艶のあるサウンドから、鋭角なサウンドまで守備範囲が広いのでモジュレーションはこれ一台で完結しますね。しかもこのマルチ感でこの大きさ。さすがです。
まとめ
UAFX全体にいえる事なのですが、6つのつまみでコントロール出来るように必要な機能がデザインされていて、同じツマミで出来ることがモードによって若干異なったり使用しないつまみがあったりと多少覚えなければならないことがあるのである程度慣れが必要になります。
ただし、プラグインとは違い直接操作出来るハードの恩恵は計り知れません。手元で触れる感触は実機を操作しているようです。
今後モバイルアプリがリリースされバイパスやフットスイッチのモードをコントロールする機能が追加されますます使い勝手が良くなると思われます。
今までPAミキサーにApolloを使ってEMT140等をドラムに使っていましたが、一度決めるとライブ中にパラメーターを操作することは無かったのですが、UAFXは手元にあるので思うように操作でき、さらに音も素晴らしいので大変満足しております。別の楽器用にもう一つほしいくらいです。
価格もUADプラグインが複数入っていると考えるとかなり良心的なお値段で、ミュージシャンにもエンジニアにもおすすめできるエフェクターです!
この記事のレビュアー
高慶航 (Rec / Mix / PA )
Sound AiDE所属のレコーディング・PAエンジニア
音のキャラクターやカラーを大切に、録音、ミキシング、PAオペレートしています。
■制作実績 : Funny Factures, TAMIW, Monomouth, um-hum, colspan, DuckHouse, DinoJr, Kuniyuki Natsu 他
■Spotify Playlist : https://open.spotify.com/playlist/2TskeAQyI0qYwohaAs3f82?si=CEc4Qt-oSyemv1czsQ1d8Q
■instagram : https://www.instagram.com/watarukokei/
ご依頼はmailにてお気軽にお問い合わせください→ kokei.soundaide@gmail.com
■Studio AiDE : https://soundaide.co.jp/rec-studio/
この記事に関わっていただいた方のプロフィール
河部翔
オルタナティブバンド、TAMIWのギタリスト。14歳からアコースティックギターを弾き始める。16歳でエレキギターを手に入れてからは様々なジャンルの音楽に興味をもち、20歳で初めてのバンドを結成、そこから現在まで数々の現場で活動する。27歳から単身上京し、アーティストやバンドのレコーディングやライブ演奏などのサポート活動を開始する。その後活動場所を関西に移し、自身のバンドやアーティストサポートで活動中。
参加バンド:LADYBIRDS、ラピュシカ、delicious neutrino、ペチコート、TAMIW 他
TAMIW「future exercise」:https://friendship.lnk.to/futureexercise_AL
田口智章
TAMIW/Muscle Soul/レコーディングエンジニア。アナログシンセサイザーにこだわり、自身のバンドTAMIWではMinimoogを使用したシンセベースや、Prophet(DSI/Sequencial)でのシンセプレイをメインに、加えてもう一つの自身のポストロックバンドMuscle SoulではRhodes Piano(MarkⅡ)とボーカル&ギターも担当するマルチプレイヤー。レコーディングエンジニア兼作曲者としてバンドコンセプトやカラーを最大限に引き出すことを信条とし、楽曲提供や作曲/アレンジなど多方面に活躍の場を広げている。大阪堺市のHidden Place-Recording Studio-でメインエンジニアも勤める。自身がメインとなり手掛けた、TAMIW – differenceのミュージックビデオがYoutubeにて公開後約3ヶ月で100万回再生を突破
レコーディング経歴:TAMIW、Muscle Soul、青い芝生、Ulm、ZOOZ
Muscle Soul「Freedom at Your Field ep」:https://friendship.lnk.to/FreedomatYourFieldep
楠川昌平
15歳の頃にギターを始める。数々のメジャーアーティスト、海外アーティストのサポート、楽曲提供、アレンジ、レコーディング、プロデュースに参加。2018年にTEICHIKU ENTERTAINMENTからメジャーデビュー。現在、インストバンドcolspanのギタリスト。シンガーやラッパー、ダンサーやライブペイントなど様々なジャンルのパフォーマーとコラボレーションを行うライブスタイルで、サウンド面だけに留まらないユーモア溢れる活動を展開する。2019年スプリットCD「Color&Monochrome3」2020年1月より12ヶ月連続配信シングルリリースを慣行。同年12月にデビュー盤フルアルバム「Threshold」リリース。
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