HeavyocityのKontaktで動作するピアノ音源ASCEND: Modern Grand。
使用している人は少ないかもしれませんが、幅広い音作りができるピアノ音源です。
この記事ではそんなASCEND: Modern Grandをレビュー、メリットやデメリット・注意点から使い方まで解説します。
是非参考にしてください。
ピアノ音源に関するまとめ記事や簡単な比較はこちらをご覧ください。
1. Heavyocity「ASCEND: Modern Grand」とは?
ASCEND: Modern GrandはHeavyocityが開発するピアノ音源です。
よくピアノ音源になるSteinwayのModel Dの音源ですが、他のピアノ音源とは一味違う様々な方法で録音された音源で、幅広い音作りができ、エフェクトも多数搭載されています。
Native Instruments「Kontakt」で動作する音源ですが、無料のKontakt Playerでも利用可能です。
開発会社 | Heavyocity |
操作画面 | |
製品名 | ASCEND: Morden Grand |
モデル | Steinway |
サンプル数 | 不明 |
容量 | 非圧縮47.8GB |
価格(定価) | 149ドル |
2. 導入するメリット
導入するメリットは主に以下の2点が考えられます。
- 幅広い音色をブレンドしたり時間軸で変化させることができる
- 幅広いエフェクトが搭載されている
幅広い音色をブレンドしたり時間軸で変化させることができる
- PIANO:通常の録音
- ppp:より静かに録音されたバージョン
- STRUCK:打たれた弦が特徴的なバージョン
- SUSTAINED:様々な方法で録音されたサスティンのあるアンビエントなバージョン
の4種類×4の計16種類から音源を選ぶことが可能です。
また、それぞれの音源を三角形の3点にセットしブレンドできるだけでなく、オートメーションやモジュレーションをかけて、時間軸に応じて変化させることも可能です。
もちろんスタンダードな音作りも可能ですが、ASCEND: Modern Grandでしかできないようなアバンギャルドな音作りも可能です。
幅広いエフェクトが搭載されている
12種類のエフェクトがありますが、それだけでなくCONVOLVEエフェクトやMIDIディレイ、アルペジエーターなどで押さえたノートから新しい音を生成するようなエフェクトもあります。
自分の発想外の新しい提案をしてくれる音源でもあります。
3. 利用する前に知っておくべき注意点・デメリット
しかしながら、利用する前に知っておくべき注意点・デメリットがあります。
- Native Instruments Kontaktで起動する音源
- アンビエントなプリセット
Native Instruments Kontaktで起動する音源
ASCEND: Modern Grandは単体で動く音源ではなく、Native Instruments「Kontakt」で動作します。
無料のKontakt Playerでも利用できるので誰でも使用可能です。
アンビエントなプリセット
スタンダードな音からアバンギャルドな音まで作成できますが、一番特徴的で充実しているのは映画音楽などで使えそうなアンビエントよりのプリセットです。
販売店などによってはシネマティック・ピアノ音源として紹介している場合もあります。
4. 口コミ・評判を紹介!
ASCEND: Modern Grandの口コミ・評判をまとめました。
口コミは少ないですが、評価は高いです。
あと、HEAVYOCITYのASCEND: MODERN GRANDかなり好み。
Heavyocity ASCEND: MODERN GRAND買った。
夜中に鍵盤。たのし
引用:Twitter
5. ASCEND: Modern Grandに関するセール情報
Heavyocityはブラックフライデーのみならず頻繁にセールを行います。
ASCEND: Modern Grandもその対象になる場合があります。
最新のセール情報はこちらの記事をご覧ください。
6. Heavyocity製品(Kontakt音源)のインストール・アクティベーション方法
ASCEND: Modern Grandのインストール・オーソライズ方法は少し面倒で以下の4STEPで完了します。Heavyocityでアカウント作成・Portalでインストールした後に、Native InstrumentsのNative Accessで再度登録する必要があります。
- Heavyocityでアカウント作成
- Heavyocity Product Portalをダウンロード・ログイン
- Registerからシリアルナンバーを入力してプロダクトを追加・インストール
- Native AccessのAdd a Serialからシリアルナンバー入力
7. 使い方を解説!
ここからは実際にASCEND: Modern Grandの使い方を解説します。
公式のマニュアル(英語)はこちらをご覧ください。
https://heavyocity.com/Downloads/ASCEND_Manual.pdf
三角ミキサー
特徴的な三角ミキサーは、3つの異なる音源をブレンドすることができます。
三角の中にある○の位置によってブレンドは決まりますが、カーソルがコーナーにある場合、そのコーナーにアサインされたサウンドのみになります。
AUTOMATE
三角形の左側にあるAUTOMATEで、三角ミキサーのカーソルにオートメーションをかけることが可能です。
オートメーションの作成方法は以下の3STEPです。
- BARSで録音したい小節の数を設定します。
- オレンジの録音ボタンをクリックします。
- 三角ミキサー内の○をクリックもしくはドラッグすると録音が始まります。
録音が終了するとオートメーションが開始されます。
ピラミッド型の横三角で、オートメーションをオンオフすることが可能です。
RANDOM
各ノートの開始位置と三角ミキサー内の動きをランダムにコントロールすることができます。
ON/OFF:RANDOMの左にある青ボタンでオンオフします。
SCATTER:各ノートのミキサーポジションのランダム性を設定します。
DRIFT:各ノートのミキサーポジションが時間の経過とともにミキサー内でドリフトする割合を設定します。
チャンネルコントロール
各チャンネル(三角形の各角)には、チャンネル名をクリックすると表示されるチャンネルコントロールがあります。
VOL:チャンネルのメインボリュームをコントロールします。
PAN:チャンネルのステレオポジションをコントロールします。
CONV(CONVOLVE):後で解説するCONVOLVEエフェクトに送られるシグナルのレベルをコントロールします。
ATTK(ATTACK):アタックキャラクターをコントロールします。中心値では、アタックはサウンドの自然なアタックとなります。
REL(RELEASE):リリースタイムをコントロールします。
TONE:トーンをコントロールします。上げると低音を除去して高音を増加させ、下げると高音を除去して低音を増加させることができます。
6 つのノブの下には、さらに 3 つのコントロールがあります。
ON/OFF:青いボタンでチャンネルのオンオフを切り替えます。
BROWSE:チャンネル名をクリックすると、現在のチャンネルのSOURCEページが開きます。
SOLO:チャンネルをソロにして三角ミキサーのモジュレーションをすべて無効にし、現在のチャンネルだけが聞こえるようにします。このコントロールは一時的なもので、他のチャンネルをソロにしたり、チャンネルのポップアップウィンドウを閉じたりすると無効になります。
SETTINGS
このセクションでは、ピアノ以外の音を有効無効にしたり、音量をコントロールすることができます。
PDL UP:サスティンペダルを離したときの音をコントロールします。
PDL DWN:サスティンペダルを押したときの音をコントロールします。
KEY PRESS:ピアノの鍵盤が押されたときの音をコントロールします。
VELOCITY CURVE
MIDIベロシティにどのように反応するかを定義できます。MINとMAXスライダーは最小と最大のベロシティを定義します。水平方向のスライダーはカーブの強度を定義します。
曲線グラフをクリックするとカーブの形が変わります。シングルカーブとダブルカーブから選択できます。
STEREO
ステレオ特性を設定する2 つのコントロールがあります。
WIDTH:ステレオフィールドの幅をコントロールします。
FLIP:左右のステレオチャンネルを入れ替えます。
TONE
音色要素をコントロールする2つのパラメータがあります。
RESO:サスティーンペダルを踏んだときにピアノの弦が励起されることで発生する、余分な共鳴層をコントロールします(この層はペダルを下げたときにしか聞こえません)。
REL:MIDIノートをリリースしたときに、より自然なサウンドを与えるリリースサンプルをコントロールします。
SOURCE
左側では三角ミキサーの角にあるそれぞれのチャンネルを選択できます。
中央で音源を選択します(4つのカテゴリに分かれた16の音源があります)。
右側では音源のプレビューとロードオプションを選択することができます。
サウンドをロードする手順は以下
- サウンドをロードしたいチャンネルを選択します。
- 4×4グリッドからサウンドを選択します。
- ロードボタン(下向き矢印のアイコン)をクリックします。
※ロードボタンの下にあるAUTOオプションがオンになっている場合、サウンドは自動的にロードされます。
プレビューボタン(スピーカーアイコン)がアクティブな場合、音源を選択するとプレビューが再生されます。
MODULATE
主に3つのモジュレーションがあります。適応することで、三角ミキサーを移動します。
X軸が横、Y軸が縦をあらわし、三角形内を動きます。
LFO / Envelope
LFOモードでは、設定されたレートで前後に振動するパターンです。LFOモードでは、各軸に2つのコントロールがあります。
RATE:オシレーターのレートを設定します。
AMT:モジュレーションの強度を設定します。
ENVモードでは、開始点から安定した速度で移動します。軸ごとに1つのコントロールがあります。
AMT:開始点から移動する速度を設定します。
MIDI CC
このセクションでは、MIDIコントローラーを各軸に割り当てることができます。対応する軸ラベルの下にCC番号を入力することでMIDI CC番号を設定できます。または、以下2STEPでMIDI Learn機能を使用することもできます。
- コントロールしたい軸のLEARNボタンをアクティブにします。
- LEARNボタンがアクティブな間に、軸にアサインしたいMIDIコントローラーを移動します。
KEYBOARD
MIDIキーボードで生成された値を使ってミキサーの位置をコントロールすることもできます。ミキサーをモジュレーションするためにアサインできるソースは2つあります。
VEL:ベロシティ
KEY:キーポジション
ARP(アルペジエーター)
和音を個々の音に分解し、パターンで再生します。ARPEGGIATE左の青ボタンでオンオフします。
アルペジエーターシーケンスが入力されたMIDIにどのように反応するかを選択します。
RETRIG:シーケンスは新しいMIDIノートが入るたびに再トリガーします。
LEGATO:シーケンスは新しいMIDIノートで再トリガーしますが、レガートで演奏された場合は再トリガーしません。
HOST:シーケンスは最初のMIDIノートで動作を開始し、それ以降は自由に動作を続けます。
1 SHOT:シーケンスはループしません。
STEPS:シーケンスのステップ数を設定します。
RATE:アルペジエーターの再生レートを設定します。
ベロシティテーブル
ページの中央にあるのがベロシティテーブルです。デフォルトでは、アルペジエーターは新しいノートを生成するときに演奏されたベロシティを使用しますが、ベロシティテーブルを使用して特定のステップのベロシティを調整することができ、アルペジエーターパターンにアクセントやゴーストノートを作成することができます。
ベロシティテーブルの上にはHOLDボタンが並んでいます。これらのボタンはタイを意味し、次のステップはトリガーされず現在のステップは2倍の長さになります。
ベロシティテーブルの下部には、CHORDボタンがあります。選択すると、そのステップはコードで演奏されます。アルペジエーターが既にコードモードになっている場合、これらのボタンは何の効果もありません。
ページの右側には、3つの再生パラメータがあります。
アルペジエーターが音符を生成する順番を選択できます。
CHORD:保持されているコードは、個々のノートに分割されることなく、そのまま演奏されます。
UP:コードの音符は、最も低い音から最も高い音へと演奏されます。
DOWN:コードの音が最も高い音から最も低い音へと演奏されます。
UP/DOWN:UpモードとDownモードを切り替えます。
DOWN/UP:DownモードとUpモードを切り替えます。
REP(x2, x3, x4):Upモードと似ていますが、各音がxの数だけ繰り返されます。
RANDOM:コードの音がランダムな順番で演奏されます。
OCTAVE:アルペジエーターにオクターブの音符を追加することができます。
SWING:アルペジエーターのリズムにスイングを適用します。
ECHOES
伴奏ジェネレーターとしても使えるMIDIディレイエフェクトです。
ページの下部には、2つのモードを切り替えるスイッチがあります。
REPLICATE
エフェクトは一般的なMIDIディレイとして動作し、あなたが演奏する各ノートをエコーで再現します。
REPLICATEの場合、左側のパラメータは以下です。
INTERVAL:MIDIディレイのインターバルパターンを選択します。
CASCADE:アクティブにすると、オクターブが上がりながらリピートします。TRANSPOSE:エフェクトのベースとなるノートを変更します。
ECHOES:エフェクトで生成するエコーの数を選択します。
GENERATE
エフェクトはノートジェネレーションエンジンとなり、演奏した和音に基づいてノートを再生します。
GENERATEの場合、左側のパラメータは以下です。
LENGTH:MIDIノートを保持している間、エンジンがノートを生成する時間を設定します。
TRANSPOSE:エフェクトのベースとなるノートを変更します。
COMPLEXITY:生成されるノートの複雑さを設定します。
2つのモードの中央と右側のコントロール部分は同じです。
C〜Bまでの鍵盤を表す丸ボタンはそれぞれクリックすることでオフにして発音するキーを制限することが可能です。
AMT:生成されたノートのメインベロシティレベルを設定します。
右側には3つのスライダーがあります。
PRE-DELAY:再生された音から最初のエコーまでの時間を設定します。OFFに設定すると、プリディレイはレートと同じになります。
RATE:エフェクトによって新しいノートが生成されるレートを設定します。
DECAY:エコーのディケイを設定します。
FX
FXページには、メイン出力用にカスタマイズ可能な4つのエフェクトスロットがあり、左右には12種類のエフェクトが用意されています。ドラッグ&ドロップでエフェクトを入れることが可能です。エフェクト全体や個々のエフェクトは名前左側青ボタンでオンオフします。
プリセットは上部「EFFECTS PRESETS」から選択し、下矢印からロードします。
それぞれのエフェクトはクリックして、下部4つのノブで調整します。
CONVOLVE
CONVOLVEエフェクトは、メインのマスターエフェクトとは別のセンドエフェクトチェーンです。チャンネルポップアップウィンドウのCONVノブでそれぞれのCONVOLVEエフェクトに送られるシグナルのレベルをコントロールします。
SHAPE
左側SHAPEセクションではフィルターとゲートをコントロールします。
LP:ローパスフィルターのカットオフを制御します。
HP:ハイパスフィルターのカットオフを制御します。
RATE:リズミックゲートエフェクトのレートをコントロールします。
AMT:リズミックゲートエフェクトの強度をコントロールします。
CONVOLVE
真ん中CONVOLVEをクリックすると、エフェクトに使用するプリセットがあります。4つ各カテゴリに12個のファイルがあり合計60個のファイルから選択することができます。下矢印をクリックしてロードします。プリセットは「CONVOLVE」左右の矢印からも変更できます。
BEATS:ファイルの長さを調整します。
AMBIENCE
ディレイとリバーブエフェクトのコントロールがあります。
DEL:ディレイエフェクトのディレイタイムを設定します。
AMT:ディレイエフェクトの強度をコントロールします。
PRE-DEL:入力信号とリバーブ信号の間の時間を設定します。
MOD:リバーブエフェクトのモジュレーション量をコントロールします。
SIZE:リバーブテールの長さを設定します。
MIX:リバーブエフェクトのドライ/ウェットミックスをコントロールします。
MASTER:CONVOLVE全体の音量を調整します。
まとめ
ASCEND: Modern Grandはアバンギャルドな音作りにも対応した幅広い音色が鳴らせる音源です。スタンダードな音も兼ね備えているので、これ一つで色々対応できると思います。ただし、映画音楽で使えそうなアンビエントな音色が特に特化している部分ではあるので、その点だけご注意ください。
この記事が参考になれば幸いです。
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